新島 敦は、27才の青年である。
塾の講師として生計を立て、招来を約束した彼女もいた。
将来の見通しが立つくらいの貯金もある。
第三者の目から見ても、新島は成功者への道を歩んでいた。
だが、しかし。
ある日、理不尽な出来事がきっかけで、新島の人生は崩れ去った。
「ぅ、あ」
痛む頭を抱えて、新島は目を開いた。
幕間のような暗闇が晴れると、目の前には1人の女性が立っている。
――ああ、そうだ。
僕は、ここで一夜を過ごしたんだ――
――そして、それはいつものこと。
同僚の女に好かれ、そして、その誘いに乗り――
新島は、全てを支配されてしまった。
女は胴体のみを覆うエナメル質のワンピースを身に着けていて、新島の目線は、どうしても、肉付きのよい太ももに吸い寄せられてしまう。
それに気がついたのか、女は嗜虐的に笑い、見せ付けるように太ももを何度かすりあわせた。
「あ……」
「気になるのね、新島くん」
「ち、が」
「ウフフ」
女が、裸で寝転んでいる新島の玉袋に足を乗せる。
身体がびくんと跳ねた。
女の足に力が篭ると、潰される恐怖からか、男の分身は身を縮こまらせる。
「ねえ、どうしてほしい?」
「あ、あ、あ」
声がかすれる。
怖い。潰されたくない。
しかし、彼の意志とは裏腹に、その股間は猛々しく起立し、更なる被虐を求めていた。
まるで、処刑台を前に首をもたげる囚人のように。
「どうしてほしい?」
それは、脳を溶かす問い。
何度となく繰り返された言葉。
どうされたいのか?
新島は考える。
「ぼく、は」
「うふふ」
新島が口を開こうとした瞬間、女性が踵を返す。
突然解放されたことにより、また、新島の背中が跳ねる。
それから、女性は新島に服を投げつけて、笑った。
「じゃあね、新島くん。君が本当にしたいことが見えるまで」
何かを考える暇もなく、女性は奥の部屋に消えていく。
新島の肉棒には、背中を刺し貫くような衝動だけが残った。